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一歩づつ登る 石立山の遭難に思う


★林道終点まで車で行って 少しだけ歩くような形式の山登りスタイルばかり登っていると

昔に比べ 奥山にまで 林道などが延び 交通機関が発達し 便利になった。

アプローチが手軽になることで 以前に比べ 簡単に山が登れるようになったのは 大変ありがたいことなのかどうか 色々意見があるところだが 確かに今は便利になった。

おおむね中低山では 山麓にこうした林道などができていて 林道終点まで車で行って 少しだけ歩くような登山が 最近 一般化してきているのが 現状だ。

 このようなやり方で 中低山を登っていると、 山を登るのか 交通機関の移動だけかわからないようになり、 交通機関に頼るだけの山登りになってしまうものだ。

こうした傾向は 今日 よくガイドブックなどで紹介されている 登山コースの紹介法にも問題があるらしい。

 おおかたのガイドブックなどは 中低山でも 交通機関を使って登り、たとえば 林道終点まで車でいって 最後の所だけを 少し歩いて 山頂に達するような山登りを当然のように紹介している。

それは 最短で お手軽に 山頂だけをめざす 形式の登山スタイル、 例えば流行の 著名山ブームとかの影響に連動しているのかもしれない。

「短時間に登る 。」このこと自体、確かに効率的に 山頂だけを めざす人には とても良いことなのだ。
が 中低山のレベルだと 人によっては 標高差 とか 歩行距離が伸びず 物足りない山行になるかもしれない。

こうした 最短登山ばかり登っていて ただでさえスケールの小さな 中低山の山のスケールを更に小さくしまっていたら 一番 困るのは 、いざ 標高差の 大きい もっと大きな山へ登ろうとしても 大きなスケール山を登るのに 必要な体力や 技量が なかなか伴わないということだ。

自分は 中低山だけしか登らないと決めていれば それでよい。
更に 大きな標高差の山などには興味がないとしないのなら それは それでよい。

だが 人間は だんだん欲が出て より高く登りたがるものだ。
いざ 標高差のある山をめざすとなると、中低山の最短登山ばかりする人には、かなり 困難な標高差にぶつかることなる。

勿論  低山でも意識的に トレーニング的に 登れば それなりに 効果があるでしょうが、意識的な トレーニング山行を する人は 現状では かなり少ない。

最近起こった 遭難事故を 見てみると 今日 よくある 「林道終点まで車で行って 少しだけ歩くような登山するような山ばかりを登っていること」によるのではと 感じざるをえません。

★最近の事故報告「石立山 遭難事故」

●地元の新聞報道などによると

「高知県香美郡物部村別府の石立山(1,707メートル)に某月某日 朝から登った 登山者(56)が下山せず、山田署や地元消防団などが翌日朝から捜索。県警ヘリコプターが同午前8時半ごろ、登山口から約1キロ離れた岩場でうずくまっている遭難者を発見し、県の消防防災ヘリが約1時間20分後に遭難者を収容、高知市内の病院に搬送した。遭難者は両ひざや右手を骨折しているらしく、命に別条はないという。 山田署などによると、遭難者は同僚2人と某日午前9時ごろから登山を始め、頂上に着いた後、午後から下山。遭難者は先頭を歩いていたが、同僚2人が午後5時すぎに登山口に順次到着した後も姿が見えず、同日午後6時ごろ県警へ通報した。

遭難者が発見された岩場は、通常の登山道から西南に約200―300メートル離れた山道から100メートルほど下で、通称「百間の滝」付近の切り立った岩場の下。同署は登山道を外れて迷った遭難者が、山道付近から足を滑らせ、岩場横の急斜面を転げ落ちたのではないかとみて調べている。

石立山は徳島県境にあり、周囲の三嶺などに比べ険しいという。」

●この事故は 危機一髪の所があったようで

「県消防防災課は、県の消防防災ヘリが出動中、ローターが損傷し、運航を休止したと発表した。
 同課によると、ヘリは午前8時45分、物部村の石立山に遭難者救助に向け出発。9時45分ごろ、地上にワイヤを降ろした。しかし、風に流され、地上の隊員が受け取れなかったために、斜面に接近した際、樹木にローターが接触した。 救助者を病院に運ぶ際に速度を出すとわずかに振動が出たため、空港に着陸後に調べたところ、ローターが損傷していたという。同課では某日から運航を休止。00日にもメーカーを呼び、詳しい損傷状況を調べるが、調査だけで1、2週間かかるという。運航休止の間、緊急事態には四国他県の消防防災ヘリや県警のヘリの協力を受ける方針。」

★石立山は登山口から 山頂まで 登山道が急で かつ標高差があるので 難しい山とされている。

 石立山は登山口が550m 山頂が1707mで、累積標高差1200mくらいある。

もっと大きなスケールで 大きな山に登っている方々には この程度の標高差など 全く 何の事もない範囲内の標高差であるが。
ところが 中低山の範疇などで  普段 林道終点まで車で行って 少しだけ歩くような登山するような山登りスタイルばかりを登っているとしたら、 大体 300-500-700mくらいの標高差の範囲で 登っていることが多く 1200mといえば これは 大きな標高差になるのだろうか。

石立山は 急登 標高差があるので 事故の多い 山で、2004年9月も遭難事故
http://www.i-kochi.or.jp/hp/kenkei/seian/tiiki/tozan2.htm
http://www.i-kochi.or.jp/hp/kenkei/seian/tiiki/tozan1.htm
が発生したりしている。

今回は 下山中 尾根を乗り越えるところで ルートを間違えたようだが、大体 この山域の山は 登山道自体 そんなに 整備されているわけではない。自然が多く残されている 所では ルートファインディング能力など いつも求められるのだ。

だから 石立山は 体力的にも、経験とかが求められる 難しい山とされて いて、こうした 難しい山に登るには それなりの 準備と 体力など が求められる。

今回の事故は こうしたことが不足している上に 山行計画自体に 基本的に 無理があったようで、高知県側に多大な迷惑かけたようだ。

それにしても ヘリでの救助が いかに危険と隣り合わせのなかで 行われていることか。簡単に 吊り上げられるような物でないことが よく分かった。

★「それにしても、本当に世界最高峰の山に登れる資格があるのか、そう思ってしまう登山者がいるのにびっくりする。」三浦雄一郎著より


「それにしても、本当に世界最高峰の山に登れる資格があるのか、そう思ってしまう登山者がいるのにびっくりする。特に この渋滞を引き起こしている先頭の3人グループに対しては、この疑問を感じずにはいられない。

私もプロの登山家ではない。スキーヤーであり、アマチュア登山家でしかも70歳という高齢だ。資格があるのかといわれれば、以前は?マークもついたと思う。だからこそエベレスト挑戦は、なるべく迷惑をかけることなく自分の力で登らねばと、5年間という時間をかけてきた。高所でのトレーニングも十分できたと自負している。5000m級の山のから順々にスタートし、6476mのメラピーク、6186mのアイランドピーク、8201mのチョー・オユーと5000m以上の山に6回の遠征を組み、エベレスト登山の資格があるかどうかを試してきたつもりだ。その上で、大丈夫という自信をつけてこの地までやってきたのだ。

アマチュアで高齢となれば、周囲への負担なしで行くことは絶対に無理だ。荷上げ、ルート作りなどなど、助けてもらわねばならない部分はいっぱいある。しかし もっとも肝心なのは自分自身の体力と登攀技術、そして気力だ。「シェルパさえいれば大丈夫、体力や技術がなくても登頂できる」。一部にはこんな考えで挑戦する人もいるのではないだろうか。それほどエベレストは甘くはないのに。

だからこそ、南東稜の下部で待たされているときは、腹が立った。アイスフォールの入り口で、自分でアイゼンを装着できずに渋滞を引き起こしていた登山者がいたことを思いだし、いままた、ロープをつたえればさほど難しくない南東稜の斜面を登れず、長い渋滞を作らせた登山者がいる。しかも登攀に時間がかかる者は、後方からの登山者に道を譲るという山のルールも知らない。ましてや、彼らは私よりずっと若い。

待たされていることに、単に腹を立てているのではない。8700mで渋滞するということは、登頂の断念や、下手をすれば死にもつながることなのだ。」

  三浦雄一郎著 「 高く遠い夢 70歳エベレスト登頂記 」 双葉社 2003年7月10日初版

★「いきなり」 より 大事なのは 順序よく ステップバイ ステップで 一歩づつ 登ることだ

今日では エベレストでも 渋滞するぐらい 登山の能力が低い登山者がヒマラヤの高峰である「著名山」エベレスト」に登ろうとするらしい。

どうしても 登りたいのなら 三浦雄一郎氏が積んできたステップ バイ ステップの積み重ねという 順序があるのである。いきなり 高い山を登ろうとするから 無理がでてくるのである。

それなのに なぜ無理してまで どうしても登ろうとする傾向が あるのか?
そんなに 世界最高峰という著名山への憧れがあるのだろうか?

そりゃ 最高峰へ 登るのは 抑えきれないものがある のは 本当だろう。

だからこそ その為の きちんとした手だてが必要なのだ。
どうしても 登りたいという 強い意志を持ち続ける 登山者は 三浦氏のような きちんとした 順序を踏めば 70歳でも チャレンジできるのである。

それが どうして  ヒマラヤの特定の著名山になってしまうのかは 「山の情報」が 偏ることに遠因があるのだろう。

ヒマラヤでも そうなのに ましてや国内の著名山ブームは 相変わらず続いており 日本国内の特定の山へ特定のルートから登ることで 登山者集中による 渋滞を引き起こし 登山道の洗掘など 山の自然へも 深刻な影響をあたえているのが 実情だ。

エベレストで さえ引きおこされる 山の渋滞は 国内の山では 著名山なら 日常的に 普通のことであるのだ。

だとすれば
三浦雄一郎氏のいう「エベレスト登山の資格があるかどうか」を 国内の山にも当てはめてみてみるとよい。

登ろうとする山が登山者に要求するレベルは 自分の今の 実力 経験度 技術度 体力に 見合っているか 考えてみることだ。

無理があるのなら その山にあえて登らなくても その山以外でも 素晴らしい山々は 探せば いくらでもあるのだが、著名山ブームは 登山者を特定の著名山に 無理矢理 集中させてしまっている。

登山者が もし どうしても その著名な山を登るというのなら 順序よく ステップバイステップで レベルを上げてからにした方が 無理して 登るより 遙かに より快適に より楽しくのぼれるのだが、今日 やたら焦ったように 著名山の熱に 侵されて登りを焦っている傾向は こうしたステップを無視することにつながって いるようだ。

ともかく 著名山ブームは 初心者が いきなり高山へ登る傾向を さらに助長していている 根源のような気がする。

何も慌てて 著名山など全く登ることはないと思うのだが、どうしても登りたいのなら、 慌てることなく 順序よく 進んでいけばよい。山は ゆったりと じっくり待っていてくれるのだから。

★一歩づつ登りつづける

三浦氏には エベレストは70歳までまっていてくれた。

「夢は持ちつづけることだ。諦めずに向かっていけば、きっと叶う。
そう信じ、そう念じて、一歩づつ登りつづける。。。。いつか夢の山頂へ」

  三浦雄一郎著 「 高く遠い夢 70歳エベレスト登頂記 」 双葉社

三浦氏再度登頂へ75歳の再チャレンジ

75歳の再チャレンジ。
2008チョモランマ・ミウラ・プロジェクト

山と溪谷 2006年4月号によると
「----サムエル・ウルマンの詩の一節、「青春とは心の若さである」という考え方に共感します。
年をとるとどうしても気持ちの部分が弱くなってしまいますけど、
勇気だとか情熱だとか、奮い立たせるぐらいの強烈な夢を持つことが大事なのではないでしょうか。」
三浦雄一郎 「山と溪谷」 2006年4月号

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2005年9月25日 第1版制作
2006年3月21日 更新

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