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登らせてもらった


『岳人』 2008年5月号 備忘録 松本 龍雄 氏 「登らせてもらった」


登らせてもらった

松本 龍雄 氏 
『岳人』 2008年5月号 備忘録



「本来スポーツは趣味なんだから、成功し、もてはやされても「運がよかっ
た」とか「いい仲間がいたからと」受け止めて謙虚さを忘れないといいんだけ
ど、テレビに出たり本を書いたりして、半職業的登山家と呼ばれる存在になっ
たとき悲劇が始まると思う。」


「自分の魂が気に入った山を拠りどころにして じっくり楽しんだ方が、もっ
といい登山とか人生につながるような気がする。

いくつかの山を季節やルートをかえて何十回となく登り続けることのなかに宝
物があるんです。」


「その年齢に応じ、自分の成長に合わせてよりよい山登りの考え方は変わって
いくと思います。ただひとつだけ変わっていないとすると、何もやってもいい
けど、自分に恥じない、自分が納得できるものでなければ自分の登山でない、
ということですね。

自分に恥じない登山とは、それだけ研鑽し、努力し、鍛えあげておくというこ
と。自立本願でいけ、自分自身を頼りにしろ。」

「宇宙から地球をいたわるような気持ちで見つめて、いま自分がやろうとして
いることがどういう危険をはらむのか、真剣に真摯に考えて準備し、体力、気
力を整え、危険を知りつつチャレンジする本当の挑戦者になれるかどうか。

いや、挑戦なんて ことば なんて おこがましいと思う。
挑戦者である自分は、たかだかちっぽけな人間なんだ。自然のほうが巨大なん
だよ。だからさりげなく、ちょっとだけ私にも登らせてくださいと。自然を、
自分の魂の遊び場として貸してもらうわけだよ。

登ったんじゃない、登らせてもらったことだけが残るんだ。」
『岳人』 2008年5月号 備忘録


『岩登りがうまくなる本』





『岩登りがうまくなる本』
松本 龍雄 著
株式会社 朋文堂新社 
1967年6月20日発行



「危険とか不安とかは、それを知って犯すものではなく、登山を実践するもの
に、より充実した人生にプラスする何かをさぐりださせ、山や仲間を大切にす
る謙虚さと、誠実の尊さを教え、登山を通して、ライフ・ラインにつらなる友
情さえ生みださせる自然の摂理というべきものなのです。」
『岩登りがうまくなる本』

『初登攀行』




『初登攀行』
松本 竜雄 著
1966年 あかね書房 
1979年 中公文庫 初版
2002年 中公文庫 改版


「アルピニズムの本来的な意義−−−それは、もともと行為の無償性ではなか
ったろうか。それは、登山にかぎらず、アマチュア・スポーツ全体の存在意義
であったはずである。それが、今 、すべてにスターを必要とし、何人かの記
録保持者のみを尊重しようとする、ジャーナリズムやマスコミによって汚され
はじめていた。」



「あわただしい 、ひとときが過ぎ去った。
この何年かの間、ぼくは、絶えず飢えたもののように、何ものかを追い求めて
いた。その間に、ぼくのほかにも、何人も何十人もの初登攀者が生まれ、そし
て消えていった。

今、ぼくは、まるで嵐の過ぎ去ったあとのような虚脱感を感じる。
あの 青春を賭して得た栄誉も、今では色褪せた存在にすぎないような気がす
る。そして、あの疼きにも似た、恍惚にあふれた気持ちの昂りも、今ではぼく
の記憶から薄れていこうとしている。」
『初登攀行』

常に謙虚さ 常に 真摯な 真剣な 態度


昨今 TV番組には 賞金レースのスポーツ中継が目白押し。

確かに
当時 と今では世の中の移り変わりで
 登山をめぐる環境は 大きく変わった点もある。

しかし
松本氏が その当時 危惧していた問題などをはじめ
『岳人』 2008年5月号で 述べられていることは
昔も 今も 時代を通じて 変わらないことだと思う。
 
山と人間との関わり方など 基本的な点で
自然に対して 常に謙虚さを持つことが大切なこと。
山に対しては 常に 真摯な 真剣な 態度で接すること。

高潔な精神は 決して忘れ去られてはいけない。



2008年4月18日 第1版制作

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